松山地方裁判所 昭和25年(ヨ)170号 判決
申請人 小崎胤幸
被申請人 財団法人新田学園
一、保証 無保証
二、主 文
申請人が被申請人に対して提起すべき解雇無効確認並給料支払請求事件の本案判決が確定するまで申請人が被申請人の経営する松山語学専門学校教授兼松山外国語短期大学及び同附属夜学校講師である仮の地位を定める。
被申請人は申請人に対し昭和二十五年八月十五日から本案判決が確定するまで毎月一日に金五千八百十円也、同十五日に金五千五十円也、同二十五日に金一千二百九十三円也を支払うこと。
訴訟費用は被申請人の負担とする。
三、事 実
申請代理人は、申請の趣旨として、主文同旨の裁判を求め、申請の理由として、
(一) 申請人は被申請人財団法人新田学園(以下新田学園と略称する)の経営する松山語学専門学校(以下松山語専と略称する)教授兼松山外国語短期大学(以下松山短大と略称する)及同附属夜学校の講師として雇われ毎月一日に金五千八百十円也、同十五日に金五千五十円也、同二十五日に金一千二百九十三円也(孰れも源泉所得税控除額)の給料の支払を受けておつた処、被申請人は昭和二十五年七月末日何等の理由も告げず突然松山語専の教授を、又同年八月十九日松山短大の講師を夫々免ずる旨を申請人に通告し、又同年八月十五日から前記給料の支払をしないで今日に及んでいるものであるが右雇傭契約の解除は以下述べるような理由によつて労働組合法第七条に違反する無効のものである。
(二)(1) 先ず被申請人新田学園の学校経営の実態について。
元来被申請人は主として現理事長新田仲太郎の寄附行為に因つて設立された財団法人であるが設立当時から新田仲太郎の寄附行為の動機については兎角の噂があり、昭和二十二年末財産税の創設が噂された頃被申請人が従来経営していた新田中学の外に外国語学校の経営を計画し新田仲太郎一族の預金債権数百万円を新に被申請人名義に書替えて財産税逋脱を計りそれが露見して後日財産税を追徴された事実は確かに寄附行為の右動機を推定せしめる一資料たるを失わないものと思われる。それは兎も角として被申請人の学校経営がその公共性を無視して極端な利得追及主義を以て貫かれ、而も利得追及主義が新田仲太郎一族の私的利害に直結するものである。一例を挙げれば被申請人の経営する新田高等学校、松山語専、松山短大等の寄宿舍、売店、食堂等は被申請人の所有であるがその経営及利潤は全部副理事長である新田仲太郎の長男新田長稔個人に帰属しておるのであつて、而も之が経営に要する人件費その他の諸費用は全部被申請人をして負担させておる。それで財団法人の理事及び監事は新田仲太郎の一族及その追従者を以て独占し財団の財政は一切祕密にされ従業員労働組合学生生徒その父兄等の再三にわたる要求にも拘らず頑として之が明示を肯じない。殊に近時学校の経営難を学生生徒の父兄に訴え毎月巨額の後援費を彼等から支出せしめながらどうしてもその使途を明らかにしようとはしないのである。
(2) 被申請人新田学園の労働組合に対する態度について。
以上の如く寄附行為の動機に幾多の疑点があり学校経営の実態亦上述の如くであつて、被申請人の利得追及主義が理事長一家一門の私的利害に直結しておるため苟も被申請人の利得の障害となる事柄については事の善悪を問はず理事長一個の専断を以て強引に無理を貫くを常として来た、それがため学内の紛争は年中その跡を絶たず、昭和二十二年松山語専創立以来僅か三年間に校長又は学長は鈴木、重松、杉、虎尾と四人まで更迭しその間教授にして不当労働行為によつて解雇された者、自ら見切をつけて退職した者数知れず、甚だしいのに至つては一時間授業しただけで退職した者すらあつた。過去の紛争の中被申請人の不当労働行為に端を発しないものはないと言つても過言ではないが、就中昭和二十二年四月事件と同年十二月事件は特筆に値する。四月事件と言うのはその前年三月一日から施行された労働組合法に刺戟されて松山語専の従業員が労働組合を結成し、代表者として選ばれた数名の語専教授が理事長新田仲太郎に労働協約の締結を促したため理事長はその追従者である理事安井雅一に謀り安井雅一から右交渉の任に当つた数名の教授に対して解雇を申渡したことに起因し、又十二月事件と言うのは被申請人経営の新田中学校の従業員を以て組織する労働組合の組合長鈴木義夫が労働組合長であるの故を以て解雇されたことに原因したものである四月事件は遂にストライキには入つたが被申請人が大部分の教授の復職を認めたのと、復職した教授の大部分が被申請人の態度にあいそをつかして学校を去つたため一教授が犠牲者となつただけで結末した。十二月事件は組合の優柔不断な態度(組合員の大部分は将来理事長に睨まれることを恐れて積極的に行動することを躊躇していた)に対して愛媛県教員組合中央執行委員会が立上り組合に対してその優柔不断を責め同僚組合員擁護の為に蹶起すべきことを勧告すると同時に理事長に対して解雇の撤回を迫つたため、遂に解雇の通告は撤回されたが、爾後理事長は組合の活動的分子に対し陰に陽に種々な圧迫を加えて組合の弱体化を図る戰術に出て、遂に昭和二十四年に至り同人を退職せしめる事に成功した。このようにして組合活動に尽碎する者は次々に解雇され、或は留るに留まれないようになつて自ら職を辞し、組合は全く骨拔にされて組合活動は殆ど停止されるに至つた。
(3) 申請人は昭和二十二年四月新田中学校の従業員を以て組織する労働組合の結成に尽力し、組合の結成と同時に執行委員に挙げられ、前記四月事件には常に松山語専の労働組合と連けいして之を激励し組合総会においては松山語専のストライキを支援すべきことを組合員に説得し、十二月事件においても最も強硬派であつた、組合員の待遇改善については組合総会において小崎案なるものを提出し、若し被申請人に財源が無ければ学校の経営を県に移すべきであるとまで主張してやまなかつた。又申請人は昭和二十五年四月松山短大の講師となるや率先して労働組合の結成を主唱して松山外国語短期大学及松山語学専門学校教職員組合と称する労働組合を結成した処が、二(2)において述べたような理由で、之等の行動が新田仲太郎一族の私的利得を阻害する処があつたために理事長は申請人を蛇蝸の如く憎み遂に前記の如く解雇するに至つたものであるが、然し右解雇は明かに労働組合法第七条第一号に違反するもので無効である。
(三) 仮りに右解雇が労働組合法第七条第一号に違反していないとしても被申請人の雇傭契約解除の通告は解除権の濫用であつて無効である。従来吾が民法は契約自由の原則を基調としておつた為め、賃貸借及雇傭等の如く契約当事者の地位に大きな開きがあり、常に強者と弱者との関係に立つ場合においても、殆ど制限を設けることなく当事者双方に契約の解除権を認めて来た。然し強者の地位にある当事者は解除権を濫用することは必定であり斯くては法の根本理念である社会正義に反するため、賃貸借については特別法である借地法及び借家法において所謂「正当なる事由」なる観念を導入して契約の更新拒絶或は契約の解除に制限を加えるに至つたものである。雇傭についての特別法である労働基準法においては前記の如き「正当なる事由」については特に規定は設けなかつたが、それは労働組合法において、労働協約に関する規定を設け当事者を対等に近い地位に置くことによつて解除権の濫用を防止しうるものと考えたからであつて、決して「正当なる事由」なる観念を否定したものではなく、反つて本件における如く当事者の一方が労働協約の締結を肯じない場合においては(被申請人は申請人等の組織する労働組合の再三にわたる労働協約締結の申入れにも拘らず言を左右にして之を肯ぜずして現在に至つておる)。
――右は労働組合法第七条第二号に反する不当労働行為であるが、組合員は申請人が現に蒙つているような後難を恐れて敢えて提訴もなし得ないものである――雇傭契約の解除についても当然「正当なる事由」という制限が附せられているものと解すべきだと信ずるものである。
然るに被申請人は何等正当なる事由なくして申請人を解雇したものであつて申請人は解雇の通知を受取ると同時に被申請人に対し解雇の事由を明かにすべき旨を迫つたにも拘らず今日に至るもその事由を明示しないのは右解雇が権利の濫用である証左である。
(四) 以上のような理由によつて被申請人の解雇は法律上無効のものであると信ずるのであるが、申請人は一介の薄給な智識労働者であつて、扶養家族三名を擁しており殆ど金銭の蓄なく本案判決が確定するまで待つことは餓死を意味するのであるから本件仮処分を求める緊急の必要性がある。
と陳述し、
(五) 被申請人の答弁事実中第二項(1)の冗員陶汰の方法で経営合理化を図るため整理したとの点は否認する。又第二項(2)記載の事実は否認する。たとえ教授会の審議決定に基き解雇したものとしても該教授会は理事長の圧迫の下に形式的に審議したに過ぎないもので各教授の自由意思に基く決定ではないと述べた。(疎明省略)
被申請訴訟代理人は本件申請を却下する、訴訟費用は申請人の負担とするとの判決を求め答弁として、
(一) 申請人が被申請学園の経営する松山語専教授及松山短大及同附属夜学校の講師に就任したこと、同学園が同教授及講師の職を夫々免ずる旨を申請人に通告し解雇したこと、昭和二十五年八月十五日以降の給料の支払をしないこと、昭和二十二年松山語専創立以来四学長の更迭があつたこと、同年四月及十二月頃学園内に争議のあつたことは申請人の主張する通りである。
(二) 然れども被申請人が申請人を解雇した理由は次の通りである。
(1) 本件解雇は被申請学園の経営難から已むを得ず人員整理を行つたものである。即ち昭和二十五年度においても学生生徒の入学定員は四百名のところ僅かに二百八十名の入学者があつたに過ぎない状態で学生生徒の実人員に較べ教授講師の過剰著しく勢い冗員陶汰の方法で経営合理化を図らざるを得ない実状となつたので先ず、長期欠勤者、業務怠慢者、学術技能劣等者、成績不良者、授業に不熱心な者の中から徐々に人員整理を行い且それも外来講師から専任講師次いで教授という順序で必要程度の整理を行つたものである。
(2) 又その解雇するに至つた方法についても元来被申請学園には学長、及専任教授を以て組織する教授会なるものがあつて、教授、助教授、助手、講師等の任免等学園内運営上の重要な事項の審議権を教授会に与えており、その教授会の審議決定に基いて学園の代表理事者が、任免を行う建前であるが、申請人については特に学術技能乏しく教授能力不足又人格の点においても遺憾の点多く曾て学生生徒から排斥されたような事情もあつて、昭和二十五年六月十四日及同月二十一日の両度の教授会で申請人の退職を決議し申請人に勧告する一方これを代表理事に報告した結果、六月三十日に松山語専教授を七月三日松山短大講師を夫々免ぜられるに至つたのである。
(3) 申請人は本件解雇を目して被申請人の不当労働行為によるものであると主張するけれども之を否認する。即ち被申請学園内には申請人の口にするような合法的な労働組合なるものは存在せず従つて労働協約の締結など正式な団体の交渉を受けたこともなく、又理事者において組合の結成、組合への加入等につき圧迫干渉を加えたこともない、このことは学園の教授会がその総意に基いて自主的且自発的に申請人の退職を決議し勧告したことによつても凡そ推測できると思う。
(三) 被申請人は概ね右の事由によつて申請人を解雇したのであるが、これが解雇については右第二項に述べた通り昭和二十五年六月二十一日口頭で辞職を勧告し、次で六月三十日松山語専教授を七月三日松山短大及同附属夜学校講師を夫々免ずる旨即時解雇を通告したのであるが、これが解雇につき申請人も認める通り八月十四日迄解雇後三十日分以上の平均賃金を支払つているから本件解雇は労働基準法第二十条の規定に従つて為した適法な解雇であつて雇傭契約解除権の濫用であるとする申請人の主張亦失当であると述べた。(疎明省略)
四、理 由
(一) 被申請人は代表者理事長新田仲太郎の寄附行為に因つて設立せられた財団法人であつて、新田中学校、新田高等学校、松山語専、松山短大等の各学校を経営していること、申請人は昭和二十五年中右松山語専教授兼松山短大及同附属夜学校講師として雇われ、毎月一日に金五千八百十円、同十五日に金五千五十円、同二十五日に金一千二百九十三円(孰れも源泉所得税控除額)の給料の支払を受けておつたこと、その後申請人は被申請人より右教授及講師の職を解雇する旨の通告を受け昭和二十五年八月十五日以降右給料の支払を受けていないことは当事者間に争がない。而して、証人沼田実、同杉武夫の各証言によれば申請人は昭和二十年八月三十一日新田中学校の教諭嘱託として雇われ、新田高等学校発足と同時に同高校教諭に雇われたのであるがその後昭和二十四年三月三十一日依願退職し、同年五月三十一日松山語專教授兼松山短大及附属夜学校の講師として雇われ、その後昭和二十五年七月末頃松山語專教授の職を同年八月十九日松山短大及同附属夜学校講師の職を夫々解雇されたことを認めることができ、乙第二号証を以ては未だ之を動かすには足りない。
(二) 而して申請人は被申請人の申請人に対する右松山語專教授、松山短大及同附属夜学校講師の雇傭契約解除の通告は労働組合法第七条第一号に違反するものであるから無効であると主張し被申請人は之を争うにつき審究するに、
(1) 先ず申請人の労働組合活動について、
証人白鷹昇平の証言によつてその成立を認められる甲第二号証、証人杉武夫、同鈴木義夫、同白鷹昇平、同香坂順一の各証言を綜合すれば、
(イ) 申請人が新田中学校に在職中(昭和二十年八月三十一日より昭和二十三年三月三十一日までの間)において昭和二十二年五月頃同中学校の労働組合が結成せられたのであるが、当時組合長は鈴木義夫、組合員三十七、八名であつて、組合の力は相当強力であつたこと、申請人は俸給対策委員、協約締結交渉委員等の役員をしていたものであること、尚その組合結成の発起者は一色剛であるが、同人は一年余申請人の所に通つて相談した結果右組合を結成するに至つたものであること。
(ロ) 申請人が松山語專及松山短大在職中においては昭和二十五年四月頃松山短大発足と同時に松山語專及松山短大の教授職員を以て組織する労働組合の結成運動が起り同年八月十一日頃同組合(組合長は香坂順一)は結成せられたのであるが、
右は、同年四月末頃奧田教授が理事長の名で解雇せられるという事件があつたので、労働組合を作つて身分の保証をしなければならないということになりその際申請人は関係労働法規の研究をし組合結成に協力し、又新田高等学校の河合谷口氏に白鷹昇平、一色等を紹介して高等学校の労働組合設立当時の文献を借りる世話をしたこと、尚当時申請人は右香坂順一に対し早く組合を結成するよう督促していたこと及右組合への加入届を同組合の幹部である白鷹昇平の手元まで提出していたことを認めることができる。尤も申請人が松山短大講師在職中自ら率先して右労働組合の結成を主唱して該組合を結成したとの申請人の主張事実は之を認めるに足る確証はない。けれども前叙の通り申請人は少くとも右松山語專及松山短大の労働組合の結成に盡力し該組合に加入しようとした事実を確認することができ、他に之を動かすに足る資料はない。
(2) 被申請人の挙げている本件解雇事由の存否について、
(イ) 先ず財政上、人員整理の必要によつて申請人を解雇したものであるか否かについて考究するに、
成立に争のない乙第三号証、証人泉通雄の証言によつてその成立を推認すべき乙第四号証の一、二証人島袋茂彦(第一、二回)の証言によつてその成立を推認すべき乙第五、第六号証同第十三号証の一、二に証人杉武夫の証言の一部、証人島袋茂彦(第一、二回)、同泉通雄の各証言を綜合すれば松山語專及松山短大の経営は当初の計画に添う入学者数を得られない等の事由によつて、財政上困難な事情にあつたことは之を推認することができない訳ではないが、証人杉武夫、同香坂順一の証言によれば本件申請人の解雇当時松山語專及松山短大の教授及講師の実数は少くとも申請人担当の英語科においてはむしろ定員不足の状態にあつたこと、申請人の解雇の後まもなくその後任として同年九月に小花某を雇傭した事を認めることができる。乙第四号証の一及証人泉通雄、同島袋茂彦(第一、二回)の各証言中右認定に抵触する部分は措信し難く、乙第三、第五号証その他被申請人援用の証拠によるも申請人の解雇の理由が過剰人員の整理によるものである事を確認することは出来難い。
(ロ) 次に申請人の学力並教授能力及その人格の点について見るに証人杉武夫、同香坂順一の証言を綜合すれば申請人はその解雇当時大学審議会において專任講師のBとしての判定を受けていたこと、従つて教授能力を備えていたこと、申請人とその後任の小花某とは教授能力の点において差異を認められない事を認めることができ証人沼田実、同島袋茂彦(第一、二回)の各証言中右認定に反する部分は措信し難く乙第七号証の一、二その他によるも未だ以て申請人の学力並教授能力が絶対的乃至は相対的に著しく劣位であることを確認するには足りなく、乙第八号証その他によるも未だ以て申請人の人格の点を理由として本件解雇の正当性を立証するには足りない。
(ハ) 次に被申請人は申請人の解雇は代表者たる理事長の專断によるものでなく短大教授会の評決に基くものであると主張するけれども証人杉武夫の証言の一部と証人白鷹昇平、同香坂順一の証言によれば本件審議に当つた同教授会はその構成員が完全な自由意思に基いて決議したものでない事を窺うに足り証人島袋茂彦(第一、二回)の証言中右認定に反する部分は措信し難く乙第一号証、同第十号証の一、二その他によるも未だ右認定を動かすには足りない。
従つて叙上説示によつて被申請人の挙げている解雇事由は遂にその立証がないものと謂うの外なく、この点に関する被申請人の主張は採用し難い。
(3) 次に被申請学園の性格並代表者理事長新田仲太郎の労働組合乃至申請人に対する態度に就いて考察するに、
証人福田仁、同杉武夫、同三浦勘之介、同白鷹昇平、同鈴木義夫、同香坂順一の各証言に弁論の全趣旨とを綜合すれば、被申請学園の代表者である理事長新田仲太郎は従来より教職員を以て組織する労働組合の存在及その幹部を極度に嫌い、且之を圧迫しその弱体化を図つて来たものなること。従つて被申請人の経営せる新田中学校、新田高等学校及松山語專においては従来その労働組合の組合長(例えば影浦、松田、一色、鈴木、三浦勘之介)乃至は組合活動に力を注ぐ者は殆ど右理事長の意思によつて解職され或は自ら辞職を申出て退職していること。右理事長は申請人に対しても組合運動の闘士なる故を以て右新田高校より松山語專に転勤せしめ機を見て之を解雇せんと画策していたこと、従つて被申請学園は理事者と教職員間等においてとかく紛争を惹起して来たこと、又松山短大及松山語專の教職員を以て組織する労働組合(前叙の通り昭和二十五年八月結成)の副組合長に就任した白鷹昇平はその後解雇の通告を受けていることを認めることができ、証人島袋茂彦(第一、二回)の証言中右認定に反する部分は措信し難く他に之を動かすに足る資料はない、又乙第十二号証によるも未だ以て本件解雇は理事長の圧迫によつたものでないとする証拠としては足りない。
仍て叙上の事情を彼是考合すれば被申請人の本件解雇の決定的理由は申請人の前示(1)認定の如き組合の結成加入行為をしたことにあると認めるの外はなく申請人に対する本件解雇の通告は労働組合法第七条第一号に該当し法律上無効であると謂うの外なく、未だその効力を生じないものと謂わねばならない。
(三) 仮処分の必要性について、
申請人は一介の薄給な智識労働者であつて扶養家族三名を擁しており殆ど金銭の蓄ないことは被申請人の明かに争はないところであるから之を認めることができるから、本案判決確定に至るまでの間仮りに右申請人の地位を保全すると共に被申請人は申請人に対し申請趣旨第二項の通りの給料を支払うの必要性ありと謂うことができる。
仍て本件申立は爾余の点に判断を進めるまでもなく正当として之を認容すべく訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のように判決する。
(裁判官 加藤康二 橘盛行 水地巖)